2011年6月13日月曜日

原発労働者の染色体異常


今から、22年前、福島県立環境医学研究所の村本淳一専門研究員による、原発労働者と一般住民とのリンパ球細胞中の染色体異常の比較研究があります。
 1984年から5年間かけて、20代から60代までの男性労働者115人から計93505個のリンパ球細胞を採取し、一つひとつ顕微鏡で観察して異常をチェックしたという、貴重な記録です。
 対照群として、一般住民599人のリンパ球細胞が分析され、原発労働者と同じ20代から60代までの男性170人からは、18785個の細胞が調べられました。
 二動原体染色体異常は、原発労働者が0.15パーセント、一般住民が0.1パーセント。環状染色体異常は、原発労働者が0.07パーセント、住民が0.02パーセント。
 二種類の異常を合わせると、原発労働者の出現率は、0.22パーセントであるのに対し、一般住民は、0.12パーセントで、約2倍の出現率が確認されました。

 原発労働者の累積被爆線量が10レム(100ミリシーベルト)では、異常が0.3パーセントであるのに対し、14レム(140ミリシーベルト)では、0.6パーセントに上がるという「線量効果」(線量が上がるほど影響も大きく出る)も同時に確認されています。
(以上、月刊「技術と人間」19894月号参照)

二動原体染色体や環状染色体は顕微鏡による目視(目で見て調べる)によって数え上げることができます。(これらの染色体異常は「不安定型異常」と呼ばれ、細胞分裂を起こすと細胞は死んでしまいます。体細胞の話なので、遺伝的影響とは直接関係はありません)

 福島の人たちが、日々見えない放射能におびえたり、悩み苦しんでいることに対して、私たちはなかなか有効な援助ができず、もどかしい限りですが、今後の政府や県、東電に対する補償請求のための証拠も、今から準備することが大事です。
 具体的な病気が出てきてからでは遅い。まずは、放射能汚染地域住民の定期的な健康診断・健康管理を要求することが重要でしょう。(広島・長崎の被曝者健康手帳のようなものが必要である、という意見があります)
インフォームドコンセント(医者と患者の合意)についても慎重を期さなければなりませんが、福島の住民の健康の確保、権利を守る観点からも、染色体のデータのチェックを始めることも大切ではないでしょうか。(文責 滝澤)

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